8/11
『海外勢の方針転換』
下のグラフは、国債(10年)の金利を日本とドイツで比較したものです。
マイナス金利導入後、日本国債の金利は順調に(?)下がっていました。国債自体は買われていたわけす。
しかし、7/29の日銀会合後、国債は売られ、金利は約0.1%上昇しました。翌週(8/1)も売られて、ついに今週(8/10)は逆転しました。
株は、7/29は上昇して終わりました。先物は夜間も取引されています。6/24の英国のEU離脱以後、日経平均先物とドル円(USD/JPY)は連動性が高くなっていました。
しかし、7/29の日銀会合後は、明らかに連動性が低くなりました。
次のグラフは、夜間も含めた、日経先物とドル円の15分足チャートです。
円安=株高であったのが、7/29を境に、むしろ円高でも買われています。
海外勢はこれまで低利で調達できるドルを元手に円安時には日本国債を買ってきたと思われます。
日銀が邦銀へドル資金を供給する額を倍増(120億ドル→240億ドル=2.5兆円「)したことで、海外勢の優位性は薄れます。
円高ドル安になってきたため、円建てで上昇した日本国債を売れば、ドルに換算すると利はさらに大きくなります。まさに「売り時」と判断したのでしょう。
株については、裁定買い残が減ってきていたことから分かるように、年初からほぼ一貫して海外勢は日本株を売ってきました。日銀が指数ETF購入額をほぼ倍増したことは、「底堅さ」につながってきます。
今回の日銀会合をきっかけに海外勢は、『国債売り、日本株買い』に方針を変更したのではないかと考えています。
ドル換算日経平均をご覧いただけば、高きをさらに買う動きになっています。昨年夏の高値に戻ってきています。逆の発想からすると、円高(ドル安)からドル高(円安)に転換すれば、株も売ってくる、これまでとは逆のパターンになるかもしれません。
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7/30
『アベノミクスのこれから その2』
日銀会合の結果が昨日(7/29)の後場開始して10分ほどで発表されました。ETF増額だけでしたので売られると思いきや、それは最初だけでした。13時すぎからは盛り返し、結局先日より高く引けました。手口を調べると、先物を買っていたのは、日系証券会社でした。
為替介入時には、証券会社やファンドに「協力をお願いする」という噂を聞いたことがあります。まさか今回も・・・? マイナス金利拡大はできそうになく、金融政策も限界にきているように思えます。
さて、財政政策も明らかとなりました。予想とおりと言いましょうか、いつもの「公共投資」と「ばら撒き補助」が主でした。残念ながら、子育て支援や教育補助は言葉さえ聞かれません。一時しのぎの策に過ぎないことは、すぐ世界に知れてしまいます。
「アベノミクス」は失敗に終わるのでしょうか?
2年前のブログでは、「失敗シナリオ」も書いています。よろしければお読みください。
先日の貿易統計では、久しぶりに「貿易黒字」でした。しかし、為替も株価も反応しませんでした。輸入も輸出も減っている状況での黒字だったからかもしれません。
輸入が減るということは、国内経済の停滞や縮小を意味します。輸出が減っているのは、円高の影響か世界経済の停滞が考えられます。
世界の貿易量は、2015年夏から減っているのではないでしょうか。GDPの成長率が下方修正されていることとあわせて判断すると、世界経済は下向きかもしれません。
日本は、「失敗シナリオ」にあるような「円安・株安・債権安」には、まだなっていません。また、石油や商品も適度に安定しています。世界の需要がのびていないからです。
しばらくは、低成長が続きそうです。しかし、各国の政府や中央銀行が舵取りを誤ると、世界的な不況が起こりかねません。通貨安競争は「危険な罠」に思えてきます。
欧州や日本は、マイナス金利をできる限り早くやめるべきです。『借金しても金利がマイナス』なんて、小学生が考えても不合理と判断できます。ETF購入も同様です。株式市場に介入しているのと同じです。市場が本来持つべき、正常な「調整機能」を失ってしまいかねません。
安倍首相は、経済はあくまで「支持率維持」のため。対策は一時しのぎでいいというのが本心だとしたら、今後の日本経済はどうなるのでしょうか。
7/23
『アベノミクスのこれから』
アベノミクスが曲がり角に来ていることは、株価が示しています。昨年夏の高値(20953)から始まった下落トレンドは変わっていません。アベノミクスが好調なら、世界が多少停滞しようが、高値(20953円)を更新するはずです。それは、米国と比較すれば明らかです。アメリカのダウ平均株価は、この7月、上場来高値を更新しています。
今週、アベノミクスは、「ポケモノミクス」に取って代わられた感があります。
任天堂が、「業績予想の上方修正は行わない」と発表したことで、再び焦点は、アベノミクス(金融緩和・経済対策)に戻るかもしれません。
さて、アベノミクスの今後はどうなるでしょうか。
実は、以前書いていたブログに「アベノミクス大成功」のシナリオがあります。2014年8月末に書いたものです。2年前ということになります。当時の株価は、約15500円でした。PDFで保存してあります。よろしければ、お読みください。
どんな感想を持たれたでしょうか。
このシナリオは、サッチャーの経済政策(1980台半ば以降)を参考にしたものです。現在の安倍政権も参考にしているうように思えます。公共事業の民営化(電気・ガス・水道、通信や鉄道など)は、結果的には英国経済に「活力」を取り戻しました。
サッチャーはEU加盟に消極的でした。当時の英国では、EU参加遅れは経済発展を阻害するという意見が多数になりつつありました。人頭税導入政策などへの反対もあり、サッチャーは政権から降りました。
その後、英国はEUに参加(ポンドや金融政策は従来を維持)し、海外資本をさらに積極的に導入しました。
今週、ソフトバンクが英国半導体開発企業(ARM)を買収しました。英国の反応は複雑でした。政府は歓迎しました。しかし、報道では、庶民は必ずしもそうではなかったようです。「また英国の優良企業が海外資本になってしまうのか・・・」。
シャープは台湾企業となりました。すでに日産はルノー傘下です。
もし、「トヨタ」や「浦和レッズ」、「広島カープ」が海外資本傘下となったら、日本人はどんな思いを持つのでしょうか。
サッチャーは同時に「教育」への締め付けを行っています。カリキュラムの統一、全国学力テスト、公立学校間の競争による予算再配分などです。大学では、文科系学部の縮小・廃止、理系でも工学系を優遇(補助金増など)し、(すぐに役に立たない)基礎的な理学系などへ予算減などを実施しました。そのため、オックスフォード大学やケンブリッジ大学などからは、一流の研究者が米国等へ「頭脳流出」したといわれています。調べてみると、ノーベル賞を取る英国生まれ・在住の「イギリス人」が減っているような気がします。
安倍政権でも、国立大学に対して現在、同様の政策が取られています。逆に、授業料は増やす案が検討されています。「教育」は未来への「投資」であり、国民の「宝」を育てることです。
庶民は東大や京大へ行けなくなってしまいます。塾や家庭教師について『受験勉強』に優秀な裕福家庭の生徒だけが大学に行けるのです。日本はますます固定化された「階級社会」となっていきます。
政治家の息子や娘でないと国会議員や首相にはなれない。社長や重役の子供でないと役員にはなれない・・・。
50年後、ノーベル賞を取る人は減るかもしれませんね。
7/16
「イングランドの自信」
英国の首相がテりーザ・メイさんに代わりました。英国では、マーガレット・サッチャー以来の女性首相だそうです。
「危機」のときには、女性頼みなのでしょうか。
サッチャー首相誕生の前後、70年台から80年代初めまでの英国は、経済力が衰退し、失業者が増えていました。ポンドの価値は瞬く間に下がりました。「ブレグジット」の比ではありません。1ポンド500円強だったのが、あれよあれよという間に300円まで円高(ポンド安)となったのですから。志ある若者は、チャンスを求めて世界に飛び出していきました。
さて、先週の特集では「利回り曲線」について考えてみました。
10年から急上昇し、30年をピークに下がっています。
ドイツや日本も加えると、違いがはっきりします。
3カ国とも「右肩上がり」ですが、英国の上がり方が日独に比べて顕著です。
その根拠はどこにあるのでしょうか。
下のグラフをご覧ください。
生産年齢(15歳から64歳)のグラフです。
日独はすでに右肩下がりです。日本の生産年齢人口は実質的には90年代始めには減り始めたと考えられます。なぜなら、1990年代、高校進学率は90%を超え、高校卒業後も大学・短大、専門学校へ進学する10代が飛躍的に増えたからです。
このグラフ、バブル時(1989年12月)にピークを打った「日経平均」と似ていると思いませんか。
米国を加えると、こんなグラフになります。
日本は人口が減っていくから不公平だ・・・、では、総人口比のグラフです。
インド以外は右肩下がりです。日欧米の各国は右肩下がりです。
先進国は、程度の差こそあれ、「高齢化」によって、若者の比率は小さくなります。
50年後なんて分かるわけない、と思われる方、人口統計ほど「未来」を的確に予測できる統計はないのです。
1970年台初頭には、日本の「高齢化社会」や「人口減」は予測されていました。「恍惚の人」(1973 有吉佐和子)やその映画がありました。「高齢化社会での課題・問題点」をすでに描き出していた作品です。しかし、時の政権は、自民党であれ、それ以外であれ、何もやってこなかったと言っていいでしょう。
話を英国に戻しましょう。
英国は人口が増えていきます。消費を促すのは「若者」です。多くの若者はやがて結婚し、子供をもうけます。いろいろな需要が喚起されます。
対して、ドイツは人口が減り、高齢化社会となります。人口でもやがて英国は逆転します。実力で、英国はドイツや日本よりも「経済大国」となる可能性が大きいということです。
英国の利回り曲線が40年後・50年後に下がっているのは、さすがに人口がピークを向かえ、高齢化が進んでくるからです。
翻って、日本です。
バブル期までの日本は、「団塊世代」が子供から大人へと「順路」をたどり、日本経済も歩みを共にするかのように発展してきたわけです。逆に衰退も真なりです。団塊世代が社会の一線から去りました。高齢化し、人口は減れば、需要は減ります。供給(生産)は少なくてよくなります。経済発展は難しくなります。
アベノミクスはそうした「自然の流れ」に逆らう政策です。「インフレ2%上昇」などと目標を大きくアピールすればするほど、高齢者は「防衛」に走ります。「狂乱物価」を覚えているからです。1970年初頭、国立大学の授業料は12000円でした。月ではないです。年間です。73年?からは36000円、76年からは96000へと上がりました。
年金は早々増えません。物価が上がったら大変です。節約し、利率が高くなくとも預金します。マイナス金利なら「金庫」を買い、「箪笥預金」に走ります。高名な学者や専門家にはそういう庶民の感覚がわからないでしょうね。
追加の財政政策が検討されています。また、ばらまき公共投資でしょうか。国の借金を増やすだけですね。
人口を減らさない、増やす政策が望まれます。「大学までの授業料無料」、「20歳までの医療費無料」、「子供が2人以上の場合、税金50%減」なんて政策、出てこないでしょうね。
7/16夜 追記
本日の「マーケット・アナライズ+」でイングランド銀行(英国の中央銀行)が金利を据え置いた(0.5%)ことに、「男気」を見たと言っていました。
私も英国が金利をどうするか、14日には注目していました。あまり知られていませんが、リーマンショック時に、金融緩和(QE1)を行ったのは米国だけではありません。英国も同時に行っています。英国は経済が米国よりも先に回復したので、QE3終了後、先に金利を0.5%まで引き上げています。
米英の結びつきは、想像以上に固いものがあります。化学・生物兵器があるからと、イラクへの軍事介入をブッシュ大統領が決めた際、真っ先に賛同して軍隊を送ったのは英国のブレア首相でした(結局、そのような兵器はなく、ブレア首相の支持率は低下した)。
離脱の「試練」が訪れるのは、もう少し先です。利下げは(0.25%か0%)は、そのときのための「切り札」です。米国にも同調してもらわねばなりません。まだリーマン前夜ではない英米にとって、利下げする必要はないと判断したのでしょう。
*リーマン前夜なのは、銀行などの株価からみると日独なのかもしれません。イタリアはいつものことですから。 |
7/1
「ユーロ・クライシス(危機)その2」
英国のユーロ離脱によって揺れた週間でした。その日(6/23)に各国の株価は急落するところが多かったわけです。その中身を見ると、その国の経済や英国との関係を如実に表していると考えます。
6/24:前日(6/23)比騰落率(%)
指数 |
騰落率 |
イタリア |
-12.5 |
フランス |
-8.0 |
日経平均 |
-7.9 |
ドイツ |
-6.8 |
NYダウ |
-3.4 |
英国 |
-3.2 |
豪州 |
-3.2 |
インド |
-2.2 |
シンガポール |
-2.1 |
マレーシア |
-0.4 |
表には載せていませんが、スペインやギリシャもイタリアとほぼ同じぐらい下げています。
震源地(?)の英国よりもEU各国のほうが下げています。英国との貿易では概ね輸出が輸入を上回っている国々です。今後は個別に英国との交渉になるでしょうが、関税がかかるようになる懸念、アジアや中南米などとの「競争」が激化する懸念があります。
アジア各国は、元々EUとの貿易には関税がかかります。英国とは以前に戻るか、TPPのような交渉をし、EU時代と同じにしておけば問題はありません。
フランスは、テロがあった関係で「戒厳令」状態。国境警備を厳しくし、物流も滞っているでしょう。経済活動が下降していると想像できます。
ドイツは、今後EUでの「負担」がますます大きくなります。負債を抱える南欧諸国、旧東欧からの移民、中東やアフリカからの難民対策が迫られます。
騰落率で見ると、独仏の戻りが鈍いことが分かります。新興国や米国は、6/23の価格にほぼ戻りました(7/1)。
英国は、「沈み行く船=EU」からいち早く飛び降りたのかもしれません。元々、経済力のある西欧や北欧に対し、東欧の一部や南欧の状態は厳しいものがありました。
通貨統一で、スペインではインフレが発生し、庶民を苦しめました。今後も問題が浮かんでは、対処療法(負債金利免除など)。凌いでいけるのでしょうか。やがて無理が生じます。ドイツの銀行の株価が下げ止まることができるか。中長期では疑問があります。
さて日本はどうでしょう。
6/24に大きく下げたのは、「主要国で最初に開く市場だった」、「英国に日立やホンダなどが工場を持ち、EU各国に輸出している」などが挙げられています。それなら、ほぼ同時に開いている「豪州」も同じくらい下げていいはずです。豪州の英国との関係は、旧植民地でもあり、日本より密接のはずです。
日本の経済状態がよくないことに尽きると思います。また、あらためてグラフを見ると、世界の動き(世界指数)に連動していることが分かります。6/27日こそ大きく戻したものの、世界の戻りが鈍いと、翌日は小幅続伸。6/29からはほぼ同じ動きとなっています。世界の戻りが鈍ければ、日本株は上げられない。日経平均の今後も世界の動きから目を離してはいけないことが分かります。そして・・・。
自国の経済を立て直す政策が急がれます。
「リーマン・ショック前夜」なのは、日本のほう(日本だけ?)に当てはまるのかもしれません。円高、欧州や米国の停滞、中国通貨安は下落の引き金ではありますが、根本原因ではないように思えます。
追記(7/2)
7/2のBS12「マーケット・アナラアイズ+」の放送内で、岡崎良介氏が「ドイツと日本の株価が6/24に大きく下げた理由は、「マイナス金利」と述べていました。しかし、ドイツ10年債の金利は前日まで数日はプラスでした。ここ数週間はプラスと・マイナスを行ったり来たりです。12%強下げたスペインやイタリアの金利はプラスです。ですから単純に金利のせいではありません。
蛇足ですが、岡崎良介氏は、荒野 浩氏や広木 隆氏(マネックス証券)などと並び、私が尊敬する「アナリスト」です。
7/4
追記を書き、併せて岡崎良介氏のオフィシャルサイトに質問をしました。早速、本日の「ラジオNIKKEI」のマーケット・アナライズ+(月曜11:35)で、きちんと返答していただきました。
あらためて、岡崎良介氏を尊敬するとともに、勝手にサポーターになりました。
・銀行株の下落が止まりません。日本の3大メガバンクととともに、ドイツの3大銀行のうち2つの株価が取得できます。追跡していくつもりです。
「ユーロ・クライシス(危機)1」
・・・難民問題が経済の停滞・・・英国がEU残留でも株価・為替は一時的な戻しに終わる可能性大・・・
2016年も半年が過ぎようとしています。下落の原因は何にあるのでしょうか。「アベノミクスの限界」「マイナス金利導入」「円高」「輸出の不振」などが上げられています。国内にも問題はあるでしょうが、世界の動きを見ると、その主因は「欧州」にもあるように思います。
下のチャートをご覧ください。
ドイツの株式指数「DAX」と日経平均を比較したものです。
自動車などの輸出を柱とする両国のチャートはよく似ています。
DAXは2015年4月高値からジリジリと下落し、早々に100MAや200MAを切っています。数ヶ月遅れて日経も8月のチャイナショックでそれらの移動平均を下回っています。
直近では420MAと100MAがデッド・クロスしています。2007年から2008年のチャートでも、デッド・クロス後に大きな下げになっています。戻しはあっても、デッド・クロスが解消しない限り、上昇にはつながっていません。
次のグラフは、日経平均との相関性を統計分析したものです。
(グラフは2012年からの四年間と2015年5月から2016年4月までの1年間の相関係数)
米国株価との相関が小さくなり、欧州や新興国との相関が高まっています。なお世界指数や先行指数は、当サイトで独自に算出している指数です。日本を除く世界各国の株式・金利・VIX指数、為替を総合して出しています。
先日、「国境なき医師団」がEUからの援助(約66億)を断るというニュースが報じられました。理由は、難民をトルコに戻す見返りに、EUが(トルコに)3500億円を援助しているからです。小さな扱いのニュースでしたが、「難民」が大きな負担になっていることが分かりました。
英国は難民に加え、欧州各国、特に旧東欧や旧ソビエトの国からの移民が急増しています。日本より福祉に厚い英国は、住宅や一時金、医療を提供しています。EU離脱の国民投票は、遠い日本に住む私たちには理解するのが難しいですが、「移民」「難民」が経済だけでなく、社会の相当な負担となってきている「証」といえます。
離脱か残留か、現時点では分かりませんが、残留となってもEUが抱える本質的な問題の解決には至りません。株価や為替の戻りは限定的でしょう。
ギリシャなどの問題(負債)も解決したわけではありません。ドイツや英国の株価は、今後さらに下落する可能性が大きくなっています。
したがって、ここまでの下落は、2007年から2008年の下落で言えば、まだ初期の段階と同じと考えています。
2016年6月19日記載 |